愛色と哀色の夜

「ボクの知ってることはねー」

恐らく、この中でいちばんの情報を持っているであろう麗奈さんは言うと、考えるように言葉を紡ぎました。

「…取り敢えず、ボクの本当の名前は「遠藤 麗亜」って言って、そこの女の人、《遠藤 乃愛》さんの子どもなんだって」

そこまで言うと再び考えるようにする麗奈さん。もとい麗亜さん。

「ちょ、ちょっと待って麗奈。…貴女、生まれてすぐ親に捨てられたって言ってたわよね?」

「うん。ボクが捨てられた理由は」

これだよ、そう言って首筋を見せる麗奈さんに麗菓さんは驚いたように目を丸くしました。

「それ…」

「銭湯で麗菓さんがキスしたこのほくろ。……実は奈央にも同じほくろがあるんだ」

場処は違うけどね、麗亜さんは言葉を切ると横目で奈央さん達を見ます。
《乃愛》さんと言われた女性と何やら話している彼の首筋は、コートで覆われていて見ることは出来ませんでした。

「《乃愛》さんのお婆さん……が昔罪を犯して、そのせいでボクと奈央、《乃愛》さんは捨てられたんだって」

ひとつひとつ、確認するように紡がれる言葉に耳を傾けます。ふと隣を見ると麗菓さんも同じように耳を傾けていました。

「だから、ボクと麗菓さん。…というか、奈央と花耶さんの出会いも歪んだんだよ」

本来なら、同じ場処にふたりで生まれるはずだったのが、《乃愛》さんのお婆さんのせいで歪んでしまったということでしょうか。

もう少し詳しい話を聞こうと身を乗り出したところに…



















「はーい、続きは夢の中で、ね☆」




















奈央さんの声がするのが先か、煙がわたし達を包むのが先か、わたしが起きていられたのはそこまでで、





「ごめんね、おやすみ」





最後に聞いたのは奈央さんの言葉でした。


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