愛色と哀色の夜
*****


「…このタイミングでよかったのか?」

木箱の内蓋をしっかり閉め、俺は斜め後ろに立つ女に聞いた。

「いいのよ。……このガスはどうせあの子には効かないし」

《乃愛》は言うと、ガスを吸って眠った少女達のもとへ向かう。その内ひとりの傍らに座ると優しく体を揺すった。

「…っ……おかあさん…?」

流石、俺の双子の姉だけあってすぐに体を起こす麗亜。少女は何度かまばたきをするとはっとした顔で《乃愛》を見た。

「おかあさん、麗菓さん達がっ…」

「大丈夫よ」

慌てた声の麗亜に《乃愛》は優しく答える。

「…麗菓ちゃん達はちょっと寝てるだけ。……俺と麗亜はやることがあるんだ」

麗亜は此方を見ると不思議そうに首を傾げる。その姿はとてもいじらしくて、儚かった。

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