愛色と哀色の夜
「…なんとなく、理解はした……かな?」
俺と並んで立った麗亜は、正面にいる《乃愛》に頷いて見せる。《乃愛》の手にはいつの間にか(何処から出したんだ)剣が握られていて俺達ふたりに正眼を向けていた。
今から始めるのは、『if』世界と麗亜の世界を繋ぎ俺達の記憶を統合するための儀式。
「……なんか、杏の時と同じような危険を感じるんだが…」
正面の《乃愛》には聞こえないように言ったつもりが
「ちなみに、これは杏から渡されたものよ」
口角を上げてにやりとする《乃愛》に戦慄を覚えた。
「斬られた時は痛いかも知れないけど、一瞬で終わるわ。……じゃあ、いい時は言って頂戴」
ひとつ呼吸をし、隣の少女を見詰める。少女も此方を見ると小さく頷いた。
「いいぞ」
「いつでもいいよ」
その言葉を聞いた《乃愛》は視線だけで頷き
「……大好きよ」
ほんの一瞬灼けるような傷みが走り、そのまま意識が途絶えた。
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