関谷くんは。【短編】
「付き合ってるかどうかなんて関係ない。
俺は君を好きで、
君は俺が好きだろ」
そう言って、
私の頬に手をすべらせる。
「………好きだよ、榎本」
自信たっぷりな眼差しと
愛しそうに私に触れる指先に
胸の深いところが疼く。
「………私も」
じわじわ湧いてくる気持ちに
私は胸がいっぱいで
付き合う、とか
そういう制約なんか
まるでどこかに行ってしまったように
好きで、満たされて
この気持ちがあれば
ホンモノなんだって
なんだか途方もないことを
考えてしまった。
END