関谷くんは。【短編】
彼の机の脇を通るとき
つん、と制服の裾を引っ張られる
そのせいで後ろに身体が傾くのだから、
怒ったように彼を振り向いて
睨んでやるけど
彼は素知らぬふりを通して
机に在った教科書をわざとらしくパラパラめくり始める
しばらく睨み続けると
観念したように彼は吹き出して
シャーペンで机を三回叩く
時には
ご、め、ん
と声を出さずに唇を動かして
そんな仕草に
なんだかしてやられた感が
すごくするから
べーっと舌を出して
私は彼の元を去る