関谷くんは。【短編】
「待って、榎本」
すぐに彼は私を追ってきて
私を知らない教室へと引っ張っていく
誰もいない第二会議室で
彼は私を見つめて
「部活の、連絡受けてただけ」
そう、言い訳みたいに呟く
「……別に、他の女の子と話しても気にしないよ」
ぷい、と横を向いて答えると
彼はしばらく黙る
ちら、と彼を横目で見ると
ちょっとだけ傷付いたように眉を寄せてて
彼は私を好きなんだろうか
そう、思って
「関谷くん」
「……なに」
「キス、して」
焦がれるようにせがんでみると
関谷くんは嬉しそうに
私を引き寄せてキスを落とす
触れる温もり、
少しかさついた彼の唇
胸が苦しくて仕方なくなる