関谷くんは。【短編】
今日も触れるだけ
一回きりのキス。
唇が離れた瞬間に、
彼は不敵に口角を上げる
満足そうなその表情が可愛くて
なんだかとても幸せな気分だった
愛おしそうに
私の髪を梳いてくれるから
たまらなくなって抱き付いた
「……これはこれは珍しいことで」
喉の奥で楽し気にくつくつと笑って
茶化すように私を見下ろす
それでもなんとなく
関谷くんはなにかを
堪えるような表情をしていて。
「ねえ、関谷くん」
「なに、榎本」