関谷くんは。【短編】
「私たち、噂になってるみたい」
「へえ、なんの」
「付き合ってるんじゃないかって」
小首を傾げてみると、
彼はとても楽しそうにまた
「へえ」とだけ返事をした。
その答えに少しむくれる。
結局のところ、
この関係はなんなんだろう。
いつの間にか始まって
飽きることなく続けられる逢瀬
私は彼を好きで
彼もたぶん、私を好き。
なのにこの関係は
周りには秘密にしているし、
ふたりともちゃんと自分たちの気持ちに
言及することなんてない。
もしかしたらお互い
意地をはってるのだろうか
好き、なんて
言ったほうが負けみたいに。