殺し屋(4p)
1日前
明日の決行を約束して、殺し屋は出ていった。
何だか肩の荷が下りたような気がする。
もう何も思い悩むことはない。
あと一日で全てが終わる。
あの人に貢いだお金のことも、疎まれている職場のことも、ましてやダイエットなど今となってはどうでもいい。
サラ金から借りられるだけ借りて、今まで味わえなかった贅沢をしよう。
超一流といわれるホテルのスイートを予約した。
後はあの人を誘い出すだけ。
携帯はあえて使わず、会社の電話でかけた。
「聞いて、聞いて。宝くじに当たっちゃった。すごいと思わない?本当だって。私のつきもまんざらじゃないでしょ。それで、今夜会わない?ご馳走するよ」
見え見えの嘘。
こんな嘘も見抜けないくらいに欲にまみれた人。
あぁ、私の心を逆撫でする。
(そうだ、死装束を買いに行こう)
服はもちろんのこと、鞄に靴にアクセサリー、それに下着まで、全て高級ブランド品を調達した。
エステに行きヘヤサロンに行き、約束の時間を迎えるまでには、あの人に貢いだ以上のお金を使っていた。
なんだか無性に可笑しい。
騙されたといって、あんなにも嘆き悲しんだのが夢の中の出来事のよう。
結局、あの人の値打ちはこの死装束以下だったってこと。