捕らわれ姫




「行きますよ」



声に、目をゆっくり開けると、先生はバケツを持って準備室へ向かって歩いていた。

遅れて状況に気づいた私は、慌てて追いかける。



「先生! 持ちますから」

「いえ、大丈夫ですよ」



先生が水いっぱい入ったバケツを運んでくれた事に申し訳なくなった私は、さっきまでの出来事があっと言う間に頭の隅に消えてしまった。




「じゃあ、お願いします」


バケツを床に置くと先生は自分の席に座り、またパソコンを打ち始めた。

私は雑巾をバケツに入れ、まず先に、埃を落としていく。

< 14 / 69 >

この作品をシェア

pagetop