捕らわれ姫





「姫野さん。 姫野 さくらさん」




その声に見上げると。


いつもの先生の顔がそこにあった。



「早く戻れなくてすみませんでした。

 掃除ありがとうございます」



そう淡々と話す先生。


その表情からは、何も読めない。





前だったら無愛想としか思わなかった、その表情。


でも……その温もりを知ってしまった今は―――



「姫野さん、手を出して下さい」



言われて、恐る恐る右手を差し出すと……先生はふた周り大きな手で私の手を包みこんだ。


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