捕らわれ姫




えっと驚く私に気づかない先生は、そのまま人差し指を唇にあてると、


「ナイショですよ」


そう言って、私の手の中に小さな飴を乗せた。





「水が出しっぱなしだ」



先生が動いた気配に顔を上げると、思いの外近すぎて。

ふわり香る先生の匂いに、私は恥ずかしくなって慌てて体を引いた。


そんな私にさらに近づき―――

キュッキュッ


私に覆い被さるようにしたまま蛇口を捻った。



「先生…!」


こんな所見られたら……絶対誤解される…!



私の慌てようなんて気にもしてない先生は、そのままの姿で止まったまま。



すぐ後ろは流し台。もう一歩も下がれない私の膝はあまりの緊張にガクガクしてる。


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