捕らわれ姫




「ははっ 可哀相に。

 ここの掃除、結構しんどいんですよ?」



泣きそうになるのを必死に堪えながら、手を動かす。


今日で、最後だから。






「もう充分なので、遅くなる前に終わらせて下さいね」



……そんなに早く帰したいんだ。





いつもなら心地いい先生の声が、今日はやけに耳につく。







「姫野さ」

「―――分かってます!!」



もう………



「だから……名前を、呼ばないで…」

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