捕らわれ姫




―――ダメ。


視界が歪む。




歯を食いしばって抑えるけど―――棚を拭く手が震えてる。






「……俺に呼ばれるのがそんなに嫌ですか」



―――違う。



「そうじゃなくて…」



嫌なわけない。



「彼氏に悪いですか?」



その声を。その香りを



「ズズ…そ、んなのいません…」



独り占めしたいなんて。




「―――本当に、いないのか?」


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