捕らわれ姫





「姫野」



―――先生。

私はあなたが……



「こっちを向け」

「やだっ」



腕を引っ張られて、慌てて振り払う。


こんな涙でぐちゃぐちゃな顔見られたくない。

……が、あまりに勢い良く振り払ったせいで、本棚に肘を思い切り当ててしまった。




「おい!」


ドサッ ドサドサッ



「―――っ!」
「……っ 危ね…っ」




腕を力一杯引っ張られて。首の痛みを感じた時には、すでに後ろで本が崩れ落ちる音がした。



私の視界は真っ暗。

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