捕らわれ姫




「…………」



沈黙が怖い。


先生はきっと、私の気持ちに気づいた。




シン…と静まり返る教室。


遠くで吹奏楽のトランペットの音が聞こえる。けど、その音は小さすぎて……余計に私の鼻をすする音が響く。






沈黙を破ったのは、先生。



「そんなに掃除が好きだったんですか」


「違う…」




俯いて先生の表情は見えないけど、優しい声。


だから、顔を上げられない。



「姫野さくらさん」




私はきっと、その優しい声でふられるから。

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