捕らわれ姫
「とりあえず今日は帰って大丈夫です。
また明日来て下さい」
淡々と伝えると、この話は終わりとばかりに席についてノートを見ていく。
その姿を見てからゆっくりと本棚へと目を向ける。
……虫出ないかな……。
先生はそれ以上話す様子がなかったので、私は小さくお辞儀をしてドアに手をかけた。
「姫野さくらさん。また明日」
いつもの感情の読めない声。でも……低くて心地いい声。
「さよなら、先生。
また明日」
カラカラと音を立てて開けたドアをまた閉める。
ふと見上げると、ドアの横には“生物担当 三上 圭一”の文字。
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