単行版:武士ドルが斬る!?
〔第1巻 ―序章:人間五十年―〕
本能寺の変
「信長様…。」
ああ…。あの声は…。
「吉乃かあ…。」
わしの名を呼ぶ声に気づき振り向いた…。
気付けば吉乃の屋敷の縁側にいた。
吉乃は縁側で鶯の泣く声を聞いている…。
ここは…商いの旅どころで多くの者が集い…いつも賑やかで笑いが耐えることがなかった…。
ここにくれば自然に心が和んだ。
何よりも吉乃と一緒にいれた事が生涯の中で一番輝いた時間だった…。
「信長様は、生まれ変わりを信じておいでですか?」
吉乃が…酒を杯につぎながらわしに問いた。
「吉乃が望むなら…この信長…輪廻転生があるか確かめてやってもよいぞ…。」
杯をグイッと飲み干し不安気な吉乃に答えた。
「まあ…頼もしい…。
では…この吉乃…。
次の世でお会いしたら是非そのお話を聞きとう存じます。」
吉乃は…自分の胸にもたれた。
「どうした…?
そのような事を聞くなんぞ…吉乃らしくない。」
吉乃の髪を撫でてわしは…肩をよせ胸に抱きしめる。
「いいえ…。
ただ…今は信長様の近くにいとうございます。」
吉乃は…自分の胸に顔を押し付けて笑った。
わしはそんな吉乃の顔を仰がせ口づけを交わす。
「信長様…。」
吉乃の笑顔がまるで昨日のように焼き付いた。