単行版:武士ドルが斬る!?
〔第1巻 ―序章:人間五十年―〕
「吉乃…。
自分より先に逝くでないぞ…。」
吉乃の様子がどことなくおかしいと思い口にした言葉にコロコロと笑い声をあげて彼女は言葉を返した…。
「信長様が私の事を必要と思って下さる限り…吉乃は信長様よりも遠い輪廻転生の未来までも生きてお側に仕えますわ…。」
吉乃の言葉に安心してわしは…彼女をキツく抱きしめた。
まだ…信じられぬ…。
吉乃が死ぬなんて…。
そんな事断じて許さぬぞ!
馬を走らせ駆け込み…再会した吉乃の身体はもう冷たくなっていた。
「なぜ…。危篤であること告げなかった…。」
家の者に八つ当たりしても仕方ないのだが…この悲しみを修める事ができなかった…。
「吉乃!?」
亡骸を抱きしめ彼女に口づける…。
「何か…死ぬ前に…!
吉乃に何か聞いてる者はいないか?」
吉乃の死に周囲のすすり泣く声が聞こえてくる…。
「信長様…。
吉乃は…最期こう残して逝きました…。
人間五十年‥。
下天の内を‥。
くらぶれば‥。
無限の如くなり‥。
ひとたび生を得て‥。
滅ばせぬ者の‥。
有るべきか‥。
その歌を口ずさんだ後…信長様に少し眠りにつきます故…輪廻転生の先で眠りを解いて下さいと…の言葉を残して逝きました…。」
吉乃の兄がその言葉を伝えた。