甘えて、拒否され、結局は
「AT車のメリットを生かさなきゃ」
「そんな目的で作られたわけじゃない」
「右手寂しいな」
「自分の左手でも掴んでろ」
「あなたの左手じゃなきゃイヤだー、って右手がうるさいんだ」
「うるさいのは、その口だ」
おっと、何だかカチンと来ましたよ、無論、私が。
ハンドル持ったままの左手を無理に引き離したら、さすがに事故のもとだ。かくなる上はと、彼の太ももに手を這わした。
「逆セクハラー」
「やめっ、事故るだろうがっ」
怒られた。
けれども彼の怒りは『怖い』とは思わない。
あたふたしながら怒鳴る場面は、むしろ『かわいい』とさえ思えてくる。
仕事帰りなものだから、スーツ着て、キリッな感じの彼が、セクハラされてどぎまぎしてるだなんて。
「『イヤよイヤよも好きの内』って、こんな感覚なんだね!」
「加害者目線で犯行に及ぶ動機を作るなっ!」