LOVE PRINCESS(歩夢&真希)
「じゃなくて! こうっ」
真希をおぶっていた片手を離し、真希の手を前から引っ張った。
「きゃっ!」
バランスを崩した真希は、俺の首に手を回す。
「そう、コレコレ。じゃあ、もうちょい早く走んぞ」
「や……っ! ちょっと、待って。これじゃ…」
「これじゃあ?」
「む……胸あたるじゃない」
そう小声で囁いた真希に
「……お前、胸なんかあったっけ?」
そう答えた俺が殴られたのは言うまでもなく。
勿論わざと言った言葉。
実際、真希の胸は結構デカくて。
真希の少し速くなった心臓の鼓動も伝わってくる。
でも、この胸の音は。
真希のなのか、俺のなのか、なんて、よくわからなかった。
それを誤魔化す様に、軽く走りながら。
沢山の冗談を言いながら走った。
その姿を誰かに見られてたなんて知らずに。
明日学校で、噂の的になるなんて知らずに。