薇姫/獣帝



『………運転手、名前なに?』


「あ?俺?


俺は…亮太-Ryouta-」


『亮太か。


俺は琉稀』


軽い自己紹介をした後、私は倉庫内を見渡した。



『………綺麗だな』


「は?」


亮太は私の言葉に反応して怪訝な顔をした。



『………笑顔が、綺麗だ』




“眩しい”



大袈裟かもしれないけど、私には充分眩しい。



「………ブッ…

あはははははっ‼」



『………』


………何笑ってんだよ。



ちょっといい場面みたいな感じだったじゃん。


どーしてくれんのKY野郎。



「あー、悪りぃ、わりい」


目尻に溜まった涙を人差し指で拭いている。



………殺すぞバカ。


「…初めてだったから。」



『は?』



亮太に聞き返すと、亮太は優しく笑った。



「女で、下の奴等をそんな事言うの」



『………ぇ……』



「あ!


新人だー‼」



亮太の言葉に聞き返そうとすると、誰かの大声が聞こえて口を噤んだ。


「なぁなぁ!


お前名前何て言うんだ?」



人懐っこい大きな目で私を見てくる。


『琉稀です』


「あ、敬語いらね。


俺は敦-Atsushi-!


つか、亮太!琉稀と2人で喋ってんなよ」



敦は、五月蝿い………らしい。



私が今みた限り。



「お前らが遅いのが悪い」



「何だと!?」


敦と亮太は言い争いをしてて、どんどんその騒ぎに気づいたメンバーの子達が集まってきた。



その度に私に自己紹介をして、自己紹介を催促してくる。



………名前、自分で言ったの何回目だろ。



私は頬の引き攣りをかんじながら少し笑っていた。




笑顔が眩しいのもそうだったけど、







こいつ等は何をしてても眩しいらしい。







私は少し傷む古傷を抑えた。






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