薇姫/獣帝
紘は尚の隣に座らせられてウンザリした顔をしていた。
尚は楽しそうに鼻歌歌ってるけど。
私は目を閉じて色々と考えていた。
報告書書かないと。
本家に顔出さないと。
……………はは、やる事いっぱいあんじゃん。
私は自嘲しながらポケットの中にある携帯のストラップを握った。
「……琉稀」
隣から声がして、目を開けて見ると、來哉が私を真っ直ぐに見ていた。
「……紘。
獣帝に入れるのか?」
來哉はチラリと紘を見た。
私もその視線の先を一緒に辿って見た。
楽し気な尚と言い争うまではいかないけど、話している紘。
『…それは、紘が決める事』
目を細めてその光景を見ていると、頭に暖かい感触と重みが触れた。
「……お前はいい姉貴だな」
『……別に紘の姉貴じゃないし』
くしゃりと私の頭を撫でている來哉を軽く下から睨めつければ來哉は笑っていた。