薇姫/獣帝
「着きました」
亮太の声が車内に響いて私たちは車から降りた。
「俺、やっぱ車嫌いだ」
透璃はそう呟きながら伸びをしていた。
『何で?』
「空気が篭る。
バイクは風を感じられるし、新鮮」
この都会のど真ん中で新鮮もくそも無いと思うけど。
『透璃はバイクすきだね』
「ん、好き」
透璃は私の腰に腕を回して抱きついてきた。
「最近あいつが居たから抱きつけなかった……」
あいつ、とは紘の事だろう。
私は苦笑しながら透璃の頭を撫でた。
「おーい、行くぞー」
陽の気の抜けた声で私達も歩き出した。
亮太は私の隣に立って私を横目で見た。
「あの、紘って奴。
やっぱ入んのか?」
『あぁ、みたいだね』
「楽しくなりそーだぜ。」
亮太はケラケラと笑っていた。
「亮太、次からは窓開けて」
「え、寒くないっすか?」
「寒い方がマシ」
透璃の言葉に亮太は苦笑しながら「わかりました」と言った。
倉庫の中に入れば、「こんにちゎ‼」と威勢のいい声が飛び交った。
「んー」
『よー』
「ぁ、琉稀!またバイク改造しようぜ!」
敦は笑いながらそう言ってきた為、私も口角を上げて手を振っておいた。
そのまま亮太は敦の所へ行き、私と透璃は二階に上がった。