薇姫/獣帝
服の裾をグイッと引っ張られ、その引っ張った本人はふて腐れている。
『透璃?』
顔を覗き込むと、不機嫌そうな瞳と目が合った。
「……琉稀、食べよう」
透璃の言葉に一瞬息が出来なかった。
『……』
これだけは、いい返事が出来ない。
透璃は私の手を握って力を込めた。
「……大丈夫だから、ここの奴等の料理美味しいから」
うん。
棗の料理だって、昔は美味しくて食べてた。
だけど、あの日から。
全てが喉を通らない。
前だって、棗に言われた。
咲夜にも、淳にも暁月にも、挙げ句の果て怜央にまで言われた。
『……ごめん』
口から出た言葉は、精一杯の謝罪だった。