薇姫/獣帝
「琉稀ー‼」
バアンッと音がして感覚と意識が正常に
戻った。
『尚』
ドアの前に立っていたのは、尚だった。
尚は目を見開いてその場に立っていた。
不思議に思って近寄ろうとすると、尚は辛そうに顔を歪めて手に持っていた袋を落として近寄ってきた。
『尚………』
「何?」
尚の言葉は震えていて、私の腕を強く握った。
「何が琉稀の闇?」
尚の言葉にピクリと肩が上がる。
「ねぇ………」
そんなに辛そうに言わないで。
「琉稀っ………」
こっちが苦しくなるよ。
「もう人を失いたくないんだよ………‼」
尚の悲痛な声が部屋に響いた。