薇姫/獣帝
起こしていた上半身をベッドに投げる。
怪我をしたと言う感覚があまりしない程痛みを感じなかった。
それは、あの面子の子を守れた安心で…
紛れたのかな。
そんな事を考えながらゆっくりと瞼を下ろすと眠気が襲い、それに従った。
「ーーーーーーあの子は守れたのに、俺は守ってくれなかったんだね」
深い位置に落ちる前にそんな言葉が聞こえてガバッと起き上がる。
その一瞬で汗がでる。
どうしようもなく心が誰かの温もりを求めて、喚いている。
苦しくなる程息が出来なくて、胸を押さえた。
そんな時、携帯の着信音が響いた。
ハッとしてベッドの横にある机の上を見て思わず手にとった。
『………っはい…』
「琉稀?」
さっき出て行ったばかりの來哉だった。
「まだ起きてたか?
それとも、起こしちまったか?」
何を言っているんだ?と思って携帯のうえに表示された数字に目を見張った。
3時間も経ってる…
思った以上に息が乱れている時間が長かったらしく、自分自身びっくりした。
『………いや、起きてた。
何?』
「そうか………明日、面子の奴を連れて行っていいか?」
困った様な言い方にらしくもない、と思いながら『いいよ』と言うと、息を吐いた気配がした。
『でも、何で急に?』
「……いや、お前が庇った奴なんだが…」
………あぁ、あの子…
『………責任感じてるっぽい?』
「あぁ………
琉稀に謝ってから獣帝も抜けるって言い出してな…」
『気にしないでって言ったのに……
それに、死にもしなかったし』
「そう言う事じゃねぇだろ」
來哉は呆れた様に言いながら溜息を吐いた。
「…じゃぁ、連れて行く。
お前も休めよ?じゃぁな」
『……おやすみ』
「おやすみ」
そう言って切られた通話に少し寂しく感じたのは、気のせいだ。