薇姫/獣帝




ーーーーーーーーーーーー



もうすぐ病室着く。



と、來哉からメールがあったのでベッドから起き上がって窓の外をぼうっと見てた。




ガラ




虚しく冷たい音をさせて開いたドアに目を向けると、來哉達が居た。



『本当にすぐね』



「すぐっつったろ?」



來哉はムッとした顔をして言うが、すぐって感じ方人それぞれじゃん?



そんな事を考えてると、尚の後ろから尚より小さい華奢な男の子が出てきた。




「久騾」




久騾-Kura-と呼ばれたピンク色の髪をした幼い顔立ちをした男の子。



表情は暗く、目が泳いでいた。



「こいつが、久騾だ」



『うん、覚えてるよ。』


そう言うと、ビクリと肩を揺らしてわかりやすく童謡する久騾くん。



「ごめんなさい………




僕のせいで…」



責めているらしい。




責めるなって言ったんだけどな…



苦笑しながら久騾くんの頭にポンっと手を置いた。



「ヒッ」と声を上げたものの、逃げずにそこにとどまっていた。



『………私、責めるなって言ったよね?』




「………」



『約束破ったね?』




『まぁ、死んでないけど』と戯けて言うと、來哉達は私に怪訝な顔をした。




『別に、守ったワケじゃないんだよ』





ガバッと顔を上げては?みたいな間抜けな顔をする久騾くん。




皆も呆然と私を見ていた。




『まぁ、自分では守るもクソも無かった。




ただ、久騾くんに向かって行くバイク見たら…行かなきゃ、って。




だから、守ったワケじゃない。





安心しなよ、久騾くんのせいじゃない』





「…っでも………!」



『これ以上ヒントはあげないよ』




声を低くして言うと、久騾くんは目を揺らして少し顔を青くした。






そんな私達のやり取りを黙って見ていた來哉が溜息を吐きながら口を挟んだ。





「………つまり、お前は気にするな」




『………おい、それ答えじゃないか』




「久騾はバカだからしょうがねぇ」




久騾くんは「酷いっす…」と呟きながら來哉に目を向けた。





「自惚れるな。



お前じゃ無くても誰でも助けたはずだろ、琉稀は」



來哉の言葉に満足に頷いた。



『うん、流石総長。合ってるよ』



來哉は口角を上げて私を見てから久騾に目を向けた。




「だから、“お前”のせいじゃない。」




『簡潔に言えば、奴等…轢いた奴が悪い』




私と來哉の言葉に久騾くんはボロボロと大きな目から涙を流してどんどん表情を
歪めていった。







『泣いていいよ』






「っうあああああああああ」





子供みたいに泣き叫ぶ久騾くんの背中を優しく撫で続けた。








………………




「すみません…思いっきり泣いて……」




照れ臭そうに笑う久騾くん。




「子供みてぇだったー」



陽はケラケラと笑いながら久騾くんの頭をわしゃわしゃと撫でた。





「琉稀さん、ありがとうございました」



『うん、その言葉は嬉しいな。



でも、さん付けやめようか?』



「なら、俺も久騾でいいっす。」




『敬語無しね』




そんな事を話しながら皆で笑っていた。





久騾くんは小型犬・チワワだ。




淳も犬っぽいって言われるけど、淳は柴犬。




私は笑いが込み上げてきたけど、堪えた。




「琉稀さーん点滴取り替えまーす」



真弓が呑気にそう言いながら客が居るにも関わらず部屋にはいって点滴を変え出した。




「………じゃぁ、またな」



「え?もう帰るの~?」



尚は残念そうに眉を下げながら口を尖らす。




「琉稀の為「わかったって!」




恭輔はニヤリと笑って尚を見ていた。




………恐ろしや、恭輔。




そんな事を思いながら皆を見届けた。





真弓はチラリと横目でみんなが出て行ったのを確認して私に目を向けた。





「1人見慣れねぇのが泣き喚いてた奴か?」



『ん、そう』





真弓は溜息を吐いて「うるさかったー」と呟いた。





『悪いな、』



「今度からは気をつけてくださぁい」



真弓は舌を出して笑って私を見下した。





イラっとしたのは言うまでもない。




< 304 / 430 >

この作品をシェア

pagetop