薇姫/獣帝
一週間安静におとなしく過ごした。
その間も獣帝の面子やら柊と伊織まで来た。
そのおかげで、私の病室は毎日騒がしかったらしい。
退院の準備をして、スーツに着替えた。
布団と病院着を畳み終えると丁度看護師さんが病室に入って来た。
「あら…畳まなくて良かったのに……」
そう呟きながら私の格好を見て目を見開いていた。
「……スーツ?」
まぁ、女子高生がスーツ何て持ってる人少ないしな。
苦笑して頭を下げて「お世話になりました』と言うと、看護師さんは微笑んでいた。
「琉稀…ってお前自分でやったのかよ?」
棗が私の部屋に入って来て呆れた様に笑った。
「ご兄弟?」
看護師さんはふわりと笑いながらそう聞いて、曖昧に返事をしておいた。
『ありがとうございました』
「はい。もう来ないでくださいね?」
残酷な言葉にも聞こえるけど、怪我をしないでくれ、と言う事なんだろう。
笑って返して棗と共に病室を出た。
「お、早いな」
途中で会った真弓は、いつもの白衣じゃ無くグレーのスーツを着ていた。
『お前も来るのかよ』
「悪りぃのかよ。
晃さんに電話何て失礼だろ」
どんな思考してんだよ。
私はそう思いながら、晃-Kou-…父の凄さを思い知らされた。
棗の運転で本家まで向かった。
車の中は静かで、会話は無かった。
ただ、一つだけ会話が交えただけだった。
『……真弓』
「何だ?」
『……無駄な事は言うんじゃねぇぞ』
「……」
『返事、出来るだろ?』
「……はい」
徹底的な上下関係。
必要であって必要でない。
必要で無くて必要。
そんな微妙な考えを作らせる物だが、それを有効に使わないと人を巻き込む。
それを、琉稀は生まれた時から叩き込まれていた。
棗も、他の幹部達も。
感情を教えられたのも藍城。
感情を殺す様に教えられたのも藍城。
全てを教えられたのが藍城で、
全てを貰ったのも藍城で…
…全てを無くしたのも、藍城だった。