薇姫/獣帝
「琉稀、お前連絡くれてもいいじゃねぇかよぉ~」
晴斗は私に頬ずりしながら大声で言う。
鬱陶しい。
頬に手をかけぐっと顔を離してもう片方の手で頭を叩く。
「〜〜〜ってぇ…」
『煩いな。
お前に言って何のリメットがあんだよ』
「………お祝い?」
『死ね』
軽い会話(?)をしていると、「ぇ~と?」と控えめな声が遮った。
「………落ち着いてください?」
恭輔は困惑した顔をしながら黒いオーラを纏っていて、誰も恭輔と目を合わせずにそっぽを向いていた。
『………ごめん、』
「いや、いいんだけどさ。
紘がすんごい暗い表情で仕事してっからビビってたら、親父に兄弟全員で呼ばれて集会だぜ?
そしたらお前の怪我だと?
ふざけんな‼って感じ」
『こっちがふざけんな』
お前等にまで心配されてたのか……
「……琉稀?この方って…」
恭輔は首を傾げながら手を晴斗に向けている。
『氷室 晴斗-Himuro Haruto-。
柊と伊織と紘の兄貴。』
「……4人兄弟?!」
尚はバッと身を乗り出して目を見開いた。
「お母さんとお父さん頑張ったね!」
『尚』
晴斗は表情にあまり出さなかったけど、頬を引き攣らせた。
『……悪い、晴斗』
「いぃや、別にいいけど」
氷室の4兄弟の母親は禁句だ。
「ま、俺見にきただけだから柊んとこ行ったら帰るゎ」
『忙しい奴だな』
「晃さん程じゃないけどな。
それに怜央、棗とかの方が忙しいだろ。」
『……』
「お前もな。」
晴斗は笑って私の頭をくしゃくしゃしてから屋上を出て行った。
「紘達のお兄さん?
紘が前スーツ着てたのって、お兄さんの手伝いなの?」
『うん、そう言う感じかな…』
「倉庫に携帯忘れた…」
透璃はポケットを漁りながら眉を下げて困った様に言った。
「今日は出席もう取ったし、帰る?」
「悪い…」
「よーし、ゲームしよっと」
皆は自由気ままにダラダラと立ち上がって屋上を出た。
獣帝は1人の失敗を責めずフォローするのが上手い。
「亮太ー車ー」
電話で尚が笑いながらそう言って頭を掻いていた。
『…亮太かわいそ……』
「しょうがない、亮太はそう言う役目だ〜」
陽は笑いながら煙草を吸っている。
……肺癌になって死ね。
そんな事思いながら校門に行くと、車が止まっていた。
うわぁ、何か怖い。