薇姫/獣帝
『てか、雷学冷祭って何?』
「…何だそのだっせぇ名前」
「俺の名付けた名前だが何か?」
尚が口を開いた瞬間紘の余計なツッコミが入り、それに返された言葉と声に背筋が凍った。
『……』
「……兄貴…」
「お兄様に向かって何だその口の利き方は!」
鬱陶しい兄貴をもったな、紘。
紘以外は全員鬱陶しくて煩いバカな奴等。
でも、皆いい奴だから濃く血を分け合っているんだと感じる時がある。
『で、雷学冷祭って何なの?』
未だ言い合う2人に痺れを切らし、そう聞くとクラスの奴等は顔を青くしてさっと俯いた。
……こいつらほぼ留年組だったのか?
「雷学冷祭とはな!
体育祭と文化祭一緒にやっちゃおうぜ企画の一種だ!」
グッと自身の顔を私の顔に近づけて言い放つ。
……
『バカ?』
「うわ、ブロウクンハート…」
『壊れてしまえお前の心など』
伊織はいじけて蹲って顔を伏せていた。
面倒くせぇ性格…
私は呆れの溜息を吐きながら伊織の頭を撫でて『何で早めに呼んだの?』と聞くと伏せていた顔を上げて目を輝かせた。
「そうそ!
おれ、てめぇ等席つけー!」
不良の様に周りを蹴散らしながら教卓に向かう伊織に呆れた表情をする紘を見て、どちらが兄貴か解らないと思った。
皆席に着くと伊織は満足気に笑って教卓をバンッと掌で叩いて大声を出した。
「今年は雷学冷祭の体育祭は無しだ!」
「「『………………は?」」』
クラスの奴等の間抜けな声が教室に反響した。
「…それもはや只の文化祭………」
と誰かが呟いたのを聞いた伊織がその子の発言ねじ伏せる。
『で、どうすんの?』
「おうー!
いつも雷学冷祭はクラスに理事長から直々に担当するショップを任されるから。
俺等は何となぁ~~~…」
伊織は溜めてから言い放った。
「執事喫茶だ!」
……
『却下』
「認めん」
伊織は自信ありげに笑って闘志を燃やしていた。
「よーしやるぞお前等ぁぁぁあ!」
尚は楽しそうに笑いながら、透璃と紘は嫌そうに顔を歪めながら伊織とクラスの奴等の歓喜の声を聞いていた。