薇姫/獣帝
「えー、今から鬼ごっこしまーす」
……は?
思わず小さく漏れた声に透璃が苦笑して私を見る。
それを見返す事もせず只々、スピーカーを見ていた。
「去年は獣帝だったしぃ~…
今年も獣帝の幹部以上で!
あ、プラスで琉稀と紘も逃げで!」
まさか……
パッと恭輔を見ると、笑っていない笑みを浮かべて「……俺達が逃げるの」と呟いた。
「さぁ、捕まったら最上級の恐怖を与えよう!
では、獣帝の幹部以上、他の生徒!
頑張れ!」
ブチッ
……
イラつく柊の声に殺意を覚えながら言葉を整理していた。
……私達が、全校生徒から逃げるのか…?
『殺す気か、あいつは』
「多分」
紘はスピーカーを睨んで殺気を空気に滲ませている。
そういえば、いつのまにか校舎内は静かで大量にいた来場者は誰1人居なくなっていた。
『……マジ…』
もう涙が出てくる。出ないけど。
階段にさしかかる角で生徒とバッタリあった。
「……ターゲット見っけーー!」
……
『殺すぞガキ…「行くぞバカ‼」
來哉は怒鳴りながら私の腕を掴んで走り出した。
走る準備をしていなかった私は足がもつれて転けそうになるのを何とかおさえて一緒に走り出した。
尚も透璃も、皆が皆走り出してぐるぐると校舎を回った。