薇姫/獣帝
その人物を見ようとして壁に押し付けられ、その痛みに顔を歪めた。
「……何か、柔らかくなったねぇ、
琉稀」
その声に、体が冷えていくのがわかった。
『んっ……』
口を塞がれていて息も切れている状態で苦しくて腕を掴むと、クスリと奴は笑って私から離れた。
「ほんと、弱っちぃ体。
壊してやりたくなるよ」
奴をゆっくり見上げると、
死んだ様な目をして私を見下ろす奴……
憎くて堪らない、こいつ。
「そんな警戒しないでよ?
今日は何もしないからさ」
笑って私の頬を触る。
その手を叩いて睨みつけた。
『何の用だ』
久しぶりの低い声は掠れて覇気もなかった。
「最近、何か居るみたいじゃん?」
クスリと笑う奴に殴りかかりたい衝動に駆られながら必死に拳を握って耐えた。
「なぁんだ、あの子の事どうでもいいの?」
『っ……』
ギリっと歯が軋む音をたてているのを聞きながら奴を睨む。
男は「つまんない」と呟いた。
「忘れないでね?
もうすぐーーーーーーーーーーーーー」
私はその教室から立ち去った奴の言葉に拳を握りしめた。