薇姫/獣帝
中には案の定、琉稀と頭だけ。
他に人は居なくて広くて殺風景な和室に2人距離を置いてポツンと立っていた。
『……お前等…』
ギリっと歯ぎしりをして俺等を睨みつける琉稀。
その姿を見て俺以外は息を呑んでいた。
「、ほんとに前みてぇだ……」
悲しそうに暁月がポツリとつぶやいた。
「……どうかしたか」
「はい、面倒な事が起こりました」
怜央はスッと一枚の写真を頭に渡した。
「……」
「ヤったのは、消息不明だった佐野組です。」
「……‼」
『っ……』
その場の全員が目を見開いた。
琉稀は特に過剰に反応した。
『どこだ…………』
「琉稀、『あいつはどこだ‼』
大声で怒鳴った琉稀を悲しそうに見る怜央。
「………わからないんだよ、
なぜか情報はこれしかない。」
『くっそ………‼』
ダンッと強く畳を蹴りつけ息を切らしている琉稀。
慌てて琉稀に駆け寄ろうとして琉稀が「来るな‼」と叫んだので足を止めた。
歯痒くて悔しい気持ちだ。
「……こちらも警戒するしかないだろう」
そんな緊迫した空気の中平然と写真を俺等に見える様に投げた。
ストっと畳に刺さった写真に目を向けて目を見張った。
何回か見た事のある組員が3人、酷くヤられていた。
「っ……‼」
琉稀はギリリと歯軋りを強くして部屋を荒々しく出て行った。
「琉稀の言う通りだったな」
頭がそう言って襖を見つめるもんだからそれにつられて襖を見ていた。
「あいつ、そろそろ佐野が抗争しかけてくる、って言いに来たんだよ」
その言葉に怜央が「えっ」と声をあげた。
「…………そろそろ、抗争が始まる」
頭の言葉に俺等に緊張が走った。
「………最悪の予想も、しておけよ」
「…もうとっくの前に、してますよ」
笑ってそう言うと、頭は少しだけ微笑んだ。
その微笑に驚いていると怜央が一礼して部屋を出て行った。
それを俺等も追って一礼して部屋を出た。