薇姫/獣帝
1つの襖の前で立ち止まり息を吸う。
『藍城 琉稀、失礼します』
いつもより数倍低い声でそう告げると、部屋に入った。
そこには厳つい年長者が沢山居た。
中には若い奴も居るが、側近か息子だろう。
「………座れ」
低く威圧感のある声は、紛れもない私の実の父親。
黒い髪に銀色の眼。
私の銀色の眼はこの人からだ。
………あの子は、母さんだったな…
少し頭の隅で思いながら父の二つ横に座った。
柊と伊織は静かに頭を下げてから氷室組長の隣に座った。
父の横に1つ席を開けたのは、あいつが来るから。
そう思って居たのに、あいつは着々と組の奴等が来るのに対し、全く姿を現さなかった。