薇姫/獣帝





「前にもあったね~…」







佐野は楽しそうに頬を歪めて嘲笑うかの様に私を見下す。














「そこの紘くんなら、わかるよね」













佐野の指差した方向を焦りながら見ると、目を見開いて全身を震わせている紘がいた。






『っ紘‼』










「ぉっと」










紘に駆け寄ろうとした体を抱き寄せられ近づけない。






ギロリと睨みつけて八重歯を剥き出しに叫んだ。










『離せっ‼』









「どうなるかわかって言ってる?」






『離せぇ‼』






「藍城だからって、僕の組員も負けないよ?」







話が噛み合ってないのに話を続ける佐野に殺意が芽生える。








『藍城が佐野何かに負けるか‼









私は負ける事を恐れているんじゃないっ‼







皆が傷ついて、お前の卑怯な手に陥れられるのを見たくないんだっ‼』












そう……





楼稀の時だって、負けないと確信してた。








だけど、楼稀はあぁなった。














こいつの、卑怯な手で。











目が極限まで熱くなって何かが頬を滑り落ちた。









『お前なんか……っーーーーー









武器さえ無ければ何もできないくせに‼』












フッと無表情になり私を抱き止める腕を片方だけ離して








ガっ








『っは……』





「黙っててよ。





感情に流されるまで落ちぶれたの?」








佐野がそう言った瞬間、横目に閉まっていた倉庫のシャッターが吹っ飛んだ。






それに構わず、痛む腹を片手で押さえて佐野を睨みつけていた。





















「なーんか派手にやってくれてんね」


























< 357 / 430 >

この作品をシェア

pagetop