薇姫/獣帝
『…………罪を消そうと思ってる奴なんて山程いんだよ。』
私だって昔は必死にもがこうとしてた。
『でもなぁ、消そうとしてる奴程よえぇんだよ。
心が汚くて弱くて崩れやすいんだよ‼
悲しみのどん底に突き落とされた奴等の味わう物は絶望と暗闇だ‼
それを受け止める事ができていたのは、罪のない奴等ばかりだ‼
だけどなぁ‼
人はひとの価値観を自分の価値観にしてるから弱くなったんだ‼
自分を保て‼
仮想を作るな‼
真実だけを見つめろよ‼』
「黙れっ………黙れ黙れぇ‼」
拳銃を離して安全装置を外した佐野から離れる。
「仮想が無ければ精神が無くなっていく‼
日に日に体が重くなっていく‼
ワケのわからない事を発している‼
そんな自分を仮想以外の何で固めればいいんだ?!?!」
私に向かって静かに構える。
涙が佐野の下に溜まっていく。
「………ああぁあぁぁあぁああ‼」
バンッ
銃声が聞こえたと同時に痛みを予想していたのに、ふわりと暖かくて柔らかい物が私を包んだ。