薇姫/獣帝
棗side
目が開かなくなった頑張っていた2人。
來哉とかいう奴は救急車、琉稀は藍城所有の車で病院へと搬送された。
來哉は銃弾を腹に抱えてるし、意識を失ったのにも頷ける。
だが、琉稀の意識を失った原因はなんだ?
それに嫌な予感を感じてしょうがない。
寒気を覚える程鮮明な記憶が気を狂わそうと導いているようだ。
精神的苦痛の思い出しか?
それとも、疲労か?
考えれば考える程選択肢が増えていくエンドレスだった思考を一旦止めて深く息を吸った。
「いやぁ、今回はすこぉーし過激だったね〜」
怜央は笑いながら俺の隣に来て煙草を吸い始めた。
そんな余裕そうな怜央に文句を言おうと口を開きかけて目に留まった煙草を持つ手に口を閉ざした。
怜央の煙草を持つ手は震えていて、それを押さえ込む様に置かれている手も小刻みに震えていた。
…………そうだ。
俺だけじゃない。
皆が皆、不安なんだ。
日向も淳も、暁月、咲夜も………
琉稀にあれだけ言われたのに全然思考回路に繋げられねぇよ。
小さく笑って上を見上げた。
空はとても澄んでいて、不自然なくらい雲一つ無い。
「………大丈夫。」
誰に言う訳でも無く、ただ空に向かって呟いた。