薇姫/獣帝
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真っ暗で何も無い、上も下も左右も無い。
一次元を思わせる様な世界は、私を底に底にと誘導するかの様に下に続いていた。
何かに縋ろうともせず、ただ無心で堕ちていった。
………何が何なんだろう。
ふと、奥の奥まで来た頃に感覚が芽生え始めた。
奥の奥、と言っても下を見たらまだまだ先はある。
暗くて何も見えない。
………ここは?
ぐるりと左右上下を見渡す。
だけど、左右上下と見ても暗闇が続くだけだった。
ふわりふわりと不安定な体は信じられないくらい軽くて、冷たい。
………あぁ、そうだ。
あの後…意識を失ってーーー
ーーーどうなったんだっけ?
霧がかった様にぼやけている記憶。
ーーーその中には赤がある。
そう思い始めた途端、また体が勝手に堕ちていく。
ーーーそうだ、來哉、だ。
急に脳の思考回路が閉ざされた様に集中力が切れる。
何も、私を引き止める物が無い。
誰も、私を必要としていない。
どこにも、私の居場所は無い。
堕ちていく体に何もせず……ただ涙を流した。
「……--…」
突然、上、とても上から声が降ってきた。