薇姫/獣帝
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全ての神経が通ったのが何となく解った。
伸ばし続けていた手は動かなくて、でも温かかった。
ピクリと指先だけ動かして目をゆっくりと開ける。
視界のまっすぐ前には全体的に暗い中に月明かりが差し込んでいる様子。
その視界の端に見慣れた無性に見たかった彼の顔。
『………來哉…』
「………っ!」
來哉の手に私の手は握られていた。
………いつかも、こんな事あったな…
『………はぁ…』
喉がカラカラで乾いた吐息が私の口から漏れた。
來哉は黙って私の手を離さずに隣にある冷蔵庫から水を取り出して蓋を開けた。
「………飲めるか?」
『………』
体を起こそうと繋いでいないほうの手に力を込めて体を起こそうとして、電流が全身に走ったかの様な痛みに襲われた。
『〜〜〜っ…』
「………」
來哉は握っていた手を離して私の背中に回して私の体を抱き上げた。
ペットボトルの口を私の口に戸惑いがちに押し付けるけど、口の端から全て零れてしまう。
介護されている様な自分に恥ずかしさを募らせながらも、自分の意思で体をどうにかする事は出来なかった。
來哉は黙って一瞬フリーズしてからペットボトルの水を自分の口に含み、私に顔を近づけた。
『それはいぃか………』
私の止める声を無視して私の口に自分の口を重ねて薄く私の口を指で広げて水を流し込んだ。
それを飲みながら、喉が潤っていく事に落ち着いた。
來哉は私に口移しで水を何度も流し込んでくれた。
『………もう、いぃ…』
「………」來哉はずっと黙ったままで私を心配そうに見ていた。
『………今日って、あの日から何日経ってる?』
「1ヶ月」
來哉は短く答えて顔を歪めて私を弱々しく抱き寄せた。