薇姫/獣帝
「………死ぬかと思った」
『………また?』
「………今度は、俺が」
その言葉に身体が固まった。
温かい体が私を包んでいるのに、心の底から体が全体的に冷えていく様に感じた。
「………お前が目を覚まさないのは、医者が………
精神的な問題だって言われた時…
自惚れとか、そんなんじゃなくて俺が庇ったせいだって何となく解った。
そん時、自分のやった事にとてつもなく怒りが込み上げて来た。
お前を助けてるつもりで、逆に暗闇に陥れる様なマネ、すんじゃなかったと思った。」
來哉は呼吸を一つおいて私の肩に顔を埋めた。
「………ごめん」
なぜか謝った來哉の頭を優しく撫でると來哉は口を開いた。
「………暗闇において、ごめん」
來哉の声は心底後悔してるみたいに悲しげに呟いた。
『………來哉のせいじゃないよ。
確かに、何かに不安になってこうやって目を覚まさなかったのかもしれないけど、
目が覚めたの………來哉のおかげみたいだし』
頬を両手で挟んで肩から顔を上げさせる。
不安気に揺れている目は蒼くて澄んでる。
何もかも見透かされそうだったその目が昔は嫌いだったのに………
今は好きで、愛おしい。
『………ありがとう』
少し微笑んで額を合わせながら呟いた。
來哉の目は見開かれたものの慌ててベッド傍のナースコールを押した。
來哉に目を見つめられて、「…ありがと」と返された。
ありがとうにありがとうで返されるって…
少し笑いながら外の景色………月の光に目を向けた。