薇姫/獣帝
ーーーガラッ
「琉稀?!?!」
『黙ろうか』
病院の、しかも夜中にこんな大きな声で叫ぶ医者がどこに居るんだよ。
いや、居たから言ったんだけど…
「っあーー‼
生きてる生きてるー?」
『疑問系にするな、バカ』
真弓のバカにした様な口調が気に食わず睨みつけるとへらへらと笑って点滴に目を向けた。
「栄養はとれてるし、多分前のお前の身体よりはいい方にいってると思う」
『……』
「まぁた栄養失調でしたよ?琉稀サン」
真弓はニヤリと笑って私の無い二の腕を掴んだ。
前に棗に「女は二の腕あった方が可愛い!」とか叫ばれて自分の腕に薄っぺらいのしか無い事に気づいたものの何もしなかったけど…
「この細いお腕はなんですか?」
『私の腕』
「この筋肉のつきようはなんですか?」
『私の努力』
「お前には日本語が通じねぇのかボケ‼」
真弓がシャッと歯を向いて私に飛びかかる。
それを無言で止める來哉に申し訳なく思った。
「……っよかったーー‼」
真弓はベッド傍にしゃがみ込んで片手で顔を隠した。
それに苦笑して頭を撫でると「あいつ等にも言った」と真弓が呟いた。
ここにくる前に電話でもしたのだろうか?
本当にここの医者か?
と、聞きたくなるのを抑えて笑った。
暫く三人で無言で過ごした。
気まずいとかそんなんじゃなくて、なんだか穏やかだった。