薇姫/獣帝
私は部屋を静かに出て溜息を吐いた。
「幸せにげちゃうよ?」
『……咲夜…』
佐原 咲夜-Sahara Sakuya-。
咲夜は組員だけど、怜央……裏の若頭補佐。
表向きは私が若頭補佐。
でも、私には事務的な仕事かちっぽけな仕事しか回ってこない。
まぁ、私が出なければいけない大きい仕事はちょくちょくあるけど。
若頭補佐として咲夜が動いてるのは、私に知られない様にしてあるけど、組員が話してるのを聞いてしまったから。
『…もう幸せなんて私には無いよ』
そう言うと、咲夜の頬が僅かに歪んだ。
「……あるでしょ、いっぱい」
咲夜の眼はいつも悲しげ。
その眼でみられると、どうしようも無い罪悪感が胸を占める。
『……どーだろ?』
そう言い残して離れに歩き出した。