薇姫/獣帝
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部屋は静寂に包まれ、誰1人言葉を発しなかった。
私の目から零れ落ちる涙がガラステーブルに落ちて弾ける音だけが聞こえていた。
「……琉稀」
ふと、怜央が私の名前を呼んだ。
涙をパーカーの袖で拭って怜央を見ると、辛そうな、だけど嬉しそうな表情をしていた。
「……今からは、琉稀の戦い。
俺達は何もしれやれない。」
「側で支えるしか、ね」と呟いた怜央はふわりと笑った。
言葉の意味が解らなくて見つめ続けると、怜央は眉を下げて力なく肩を落とした。
「琉稀。
俺達は俺達で強くなる。
強くなるスピードは、人それぞれだ。
……俺は俺の進み方をする。
琉稀もきっと、自然に知る。
でもね、
1人で抱え込めって言ってるんじゃないんだ。
琉稀には沢山の仲間が居る。
氷室も、藍城も。
頼ることと自分の力で歩むことには大きな差があるかもしれない。
でもさ。
1人は、苦しいんだよ。
その苦しみを、分け合ってくれる人。
それを……探してよ。」
怜央は悲しげに瞳を揺らして口角を上げた。
「……さて、俺等は行こうか」
棗がスーツのポケットに手を突っ込みながら笑って立ち上がる。
日向達もつられた様に立ち上がって私に笑いかける。
それを不安げに見つめる私は、弱いのだろうか?
「お前は1人じゃねぇんだ、ばーか」
私の頭をくしゃくしゃと撫でて棗は精一杯笑った。
「ーーーー頑張った。
頑張れ」
「今まで以上にとは言わねぇ、
ただ、違う方向を向いてみろよ」
棗は手を離して私の頬にキスをした。
目を見開いてその行為に驚くけど、棗は悲しげに笑って一歩下がった。
日向、暁月、淳、怜央…
「俺達も味方だから」
と、晴斗が言って柊、伊織。
皆私の頭を撫でてキスを落として温もりを離した。
その温もりが離れていくのを寂しく感じた。
でも、
何かが吹っ切れた、爽やかな気分だった。