薇姫/獣帝




口ごもってる私を見て晃さんは悲しそうに眉を下げた。



「……産みたくないのか?」



……は?




「だ、誰がそんな事言いまひたかっ」



か、噛んだ…


でも、そんな事気にしてられない、




「こ、晃さんは……私に産ませたくありませんか?」





顔を極限にまで赤くして聞くと、晃さんはふわりと私を抱きしめた。






「誰がそんな事言った?」






ふっと笑いながら私の肩に顔をうずめる。






「……産んで。」





優しい声音で、そう言われた時はどうしようかと思った。








涙が溢れ出して、でも晃さんを抱きしめたくて拭いもせず抱き合った。






晃さんはお腹を気遣いながら弱めに、だけど想いを伝えながら抱きしめてくれた。






そんな不器用な優しさも好きで、どんどん涙が溢れた。










「……結婚、するか」







唐突にそう言った晃さんの言葉に涙がぴたりと止まった。




…びっくりしすぎて。






私が涙をまた流し出したら、晃さんはまた笑って私の涙を親指で拭ってくれた。










好きでたまらない、この人との子供。









その子が、全ての幸せを届けてくれた。











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