薇姫/獣帝






「っぁあ……ああ…」





赤ちゃんの弱々しい鳴き声が聞こえた。





「母子ともに、無事です…」



お医者さんは目に涙を溜めながら2人の赤ちゃんを私に抱えさせた。





『っはぁ………私の……晃さんの…子?』








「そうですよっ………



おめでとうございます…!」





お医者さんに前の病室のベッドに運ばれると、額に汗を浮かべた晃さんが病室に飛び込んできた。





あちらこちらにできている傷を見て痛々しく思いながらも、微笑んだ。





「産まれました…」




「っごめん…立ちあえなくて……」




「気にしないで…



そんな事よりほら、私と…晃さんとの子」





晃さんにお姉ちゃんの女の子を渡す。





晃さんは戸惑いながらも抱きしめて顔を綻ばせた。




今は健やかに眠っている子達が愛おしい。





「…………名前、どうしましょうか?」




「…………琉稀と楼稀。」






女は琉稀で、男は楼稀、らしい。





クスクスと笑って意味は?と聞くと、晃さんは黙りこくった。





「まさかの意味無し?!」



「そのまさかで悪かったな」



不機嫌そうな顔でそう言う晃さんに笑みをこぼした。




そんな仕草さえ可愛くて。






今度は楼稀を抱かせて私は琉稀を抱いた。





「…………私達の、宝者。」





「あぁ……」









晃さんがベッドに座って私に顔を近づけて、楼稀と琉稀とも顔を近づけた。








「家族だ」








本当の意味で、家族になれたと思った瞬間だった。








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