薇姫/獣帝
「もうっ、ほんと不器用っ!」
私は暗闇の中で彼等の現在〔いま〕を見ていた。
「…………あの人はいつも不器用だゎ」
晃さん、どうしてあなたは自分の思いを口にしないの?
そんな不器用な姿に本人に隠れてクスクス笑う。
「…………晃さん。」
琉稀と楼稀に本当は組を継がせたくなかったこと。
琉稀は女の子だから、傷つけたくなくて怜央くんを引き取ったこと。
私には全てわかっているのよ?
少し怖いセリフみたいだけど、本当に。
短くて長い、そんな時間を晃さんと過ごしてきた。
…………楽しすぎた。
逝っちゃってから楽しくないや。
でも…………
晃さんに出会えた。
晃さんを愛し、晃さんに愛された。
子供が出来た。
…………子供を守れた。
「今、私……とても幸せなの」
晃さんの大きな背中。
「体は大きいくせに気ぃはちっさい」
ふふっと笑いながらそう思うと、晃さんは身震いをしていた。
それにまた笑いながら目を閉じた。