薇姫/獣帝
俺は街を走り続けた。
バイク乗ってきたりとか、タクシー拾えばいいのに。
そんな考えさえ思いつかなくて只々、目的地に走り続けた。
背筋を冷や汗が滑り落ちて俺を鞭打ち続けた。
そんな感覚に体温がどんどん下がってく。
目的地の大きな自動扉を潜り抜けて受付のようなところで息を整えることもせずそこらにいた看護師に、聞いた。
ーーー親父…佐野、健吾はっ?!
看護師さんはその名前だけでパッと顔色を変え、俺に同情の目を向けた。
その瞳にイラつく暇もなく、急かしてその場に行く事を望んだ。
ーーー
着いたところは、【霊安室】と書かれた悲しいプレートがぶら下がった真っ白の部屋。
広い部屋の隅にポツリと、居た。
白い生地に包まれたソレは赤が滲み出ていた痕が数々とあり、表面は青白く変化していた。
上の布をめくり上げると、出てくる少し腫れぼったいーーー
親父の顔。