薇姫/獣帝
………私がマンションに入るまで、棗が見ていた事は気づけなかった。
最近父が建てたこのマンション。
最上階には1つしか部屋が無い。
私用につくられた特別な部屋。
多分、あいつとか咲夜とか棗とか………色んな人に聞いたのだろう。
寝室は黒じゃないとダメ。とか。
子供みたいな私の好き嫌いをよく考えてある部屋ばかりだった。
ごちゃごちゃした物は置かれていない。
最低限必要な物は棚やらに色々常備されていた。
『……本当、ムカつく』
くしゃりと前髪を掴んで唇を噛み締める。
本当に、私の事を考えつくされた部屋ばかりだったから。
いつもあの人は私に気を遣う。