薇姫/獣帝
『………猫被りも疲れるな』
はぁっと溜息を吐いて一瞬目を伏せてすぐに鋭い視線を送る。
『大概にしてもらえるか。
自分のチームに独断でよく解らない人間を入れるのか?』
その言葉に芦屋達は目を見開いていたけど、葵1人だけはあの蒼い目で私を見据えていた。
「人間くらい見分けれる」
『考えが甘いんだよ。』
自己賛美しすぎだ。
「お前はそーゆー事する様な奴じゃねぇ」
ーーーー私の中で何かがきれた。
がシャンっ‼
机の上にあったガラスの灰皿を床に叩きつけ、破片を拾い上げる。
そして、黒いソファーに座っていた葵の喉元に振りかぶってすれすれで止める。
その行動に誰もがかたずを呑んで見ていた。
「………」
『俺は平気で人を傷つけられるよ』
そう言って蒼い瞳を冷たく見据えた。
するりとガラスを下ろして床に落とす。
ソファーから下りて鞄の中を探る。
連中の視線が私の背中に突き刺さる。
それを無視して札束を芦屋に押し付けた。
「え、何この大金…」
『灰皿代。悪かったな』
そう言って部屋の扉に手をかけた。
そのまま私は部屋を出た。